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スイッチング系電源回路と
周期定常状態シミュレーション解析

Mixed-Signal Design Solution Plaza

電源回路の種類は、リニア電源とスイッチング電源に大別されます。リニア電源はノイズが小さいという長所がありますが、電力損失が大きく発熱が大きいという短所があります。対して、スイッチング電源は、高効率で小型化が可能という長所をもちますが、スイッチング・ノイズを持つという短所が存在します。

IC回路への組込みという面では、発熱量が少なく、小型化、高効率化が可能なスイッチング電源方式を用いることが有効です。しかし、設計の観点から見ると、スイッチング電源回路は周期定常状態の特性が重要であり、定常状態に安定するまで時間がかかる回路を、直流動作点を元にシミュレーションを実行する一般的なSPICEの過渡解析を適用しようとすると多大な時間が必要となります。

ケイデンスのVirtuoso® Multi-Mode Simulation(MMSIM)群には、周期定常状態を解析するSpectre® RFエンジンが含まれます。そして、スイッチング電源回路のシミュレーションにSpectre RFの周期定常状態解析を適用することで、スイッチング電源回路設計における効果的な回路シミュレーション検証を実現します。

Spectre RFと周期定常状態解析

オペアンプなどの線形回路は、直流動作点(DCオペレーティング・ポイント)をもち、直流動作点を初期値とした小信号解析から周波数特性が求められます。

図1直流動作点と周波数特性
 
直流動作点と異なり、周期定常状態では時間に対する周期的な関数として表される動作点が存在します。
そして、周波数変換回路やスイッチング回路は、周期定常状態をもつ回路の代表例です。
図2周期定常状態をもつ回路構成


Spectre RFは、2種類の手法により周期定常状態を解析する事ができます。一つは、非線形性が強い回路の解析に適した、タイムド・メイン・シューティング・ニュートン法(PSS解析)です。もう一つは、線形性の持つ回路の解析に適した、ハーモニック・バランス法(HB解析)です。これらの解析には、周期定常状態解析をベースにした周期定常状態小信号解析の機能が含まれます。そして、周期定常状態小信号解析を用いることで、周期定常状態をもつ回路の周波数特性も解析することができます。

スイッチング電源回路は、強い非線形性を示す周期定常状態をもちます。従って、スイッチング電源回路の周期定常状態解析は、通常、Spectre RFのPSS解析を使うことが有効です。

Spectre RFは、Virtuoso カスタム設計プラットフォームのAnalog Design Environment(ADE)シミュレーション・ウィンドウから直接実行することができます。

図3PSS解析の指定
 

スイッチング電源回路のトランジスタ・レベル・シミュレーション検証

これまで、スイッチング電源回路のトランジスタレ・レベル・シミュレーションでは、主に過渡解析の大信号解析が用いられてきました。これは、スイッチング回路が(式‐1)のような周期定常状態をもつ回路であることから、SPICEの小信号解析による周波数解析が現実的ではないことに拠ります。

スイッチング電源回路の周波数特性は、ステート・アベレージ・モデルによる近似モデルを用いて検証することも可能です。しかし、この手法を用いて、入力クロックからの周波数特性への影響などを観測することは困難です。しかし、Spectre RFのPSS解析とそれに続く周期定常状態小信号解析を適用すれば、トランジスタ・レベルの周波数特性を観測することは可能です。

図4テスト回路図
 

PSS解析を実行すると、信号の周期定常状態の周波数波形と時間波形が計算されます。

図5スイッチング電源回路の周期定常状態の結果観測
 

また、PSS解析と一緒に周期定常状態小信号解析を設定することで、トランジスタ・レベルの周波数特性を観測することが可能です。

図6スイッチング電源回路の周波数特性の観測
 

この様に、Spectre RFのPSS解析を適用することで、これまで観測が難しかったスイッチング電源回路の周波数特性を観測することができます。これにより、設計効率と設計精度の向上を可能にします。

また、Virtuosoカスタム設計プラットフォーム上では、Spectreの解析の実行と同じGUIからSpectre RFを実行が可能です。ユーザーは、今までの設計手法の延長上として、新たな解析手法を容易に取り込むことができます。


菅谷 英彦
セールス・テクニカル・リード
ミックスシグナル・インプリメンテーション
テクニカル・フィールド・オペレーション本部
(2012年1月)