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THE SOUND OF CADENCE Vol.70 (June 2009)

ケイデンスの新しいサインオフ環境の提案

微細化プロセス、ギガサイズのチップにてサインオフ条件が厳しくなってきている設計にマッチしたケイデンスのサインオフ・コックピット(図1)をご紹介します。
寄生抽出からタイミング、パワー、ノイズ、ばらつきなど考慮する条件が増える中で、より一貫性のあるサインオフ環境が必要になっています。フロアプラン、配置、配線、最適化などの各フェーズにおいて、解析エンジンを共通化することによりインプリメンテーションでの整合性の取れた結果を得ることが大事になってきています。さらに各ポイントツールを環境・解析エンジンの一貫性無くデザイン・フローを進めた場合、事前のコリレーション・テストの工数も含め非常に難しいものになります。最終のサインオフ解析との整合性の取れた結果を得るということが、設計期間短縮の重要なファクターとなってきています。
図1:ケイデンスのサインオフ・コックピット

総合的なEDAソリューションを提供するケイデンスでは、各々の作業をポイント・ツールとしてだけではなく、Encounterプラットフォームにサインオフ解析と共通のサインオフ・レベルの解析エンジンを搭載しています。これによりインプリメンテーションでの作業効率を飛躍的に向上させる環境を提供します。
また、ポイント・ツールとしても、多くのデバッグ機能を搭載したGUIを持たせることにより、数字情報だけでは分かりづらかった解析手法を、視覚的により容易に行うことを可能にしました。
ここではその中の大きなトピックとして解析エンジンのコアである、Cadence QRC Extraction、Encounter Timing System、およびEncounter Power Systemをご紹介します。

Cadence QRC Extraction
デバイスのジオメトリの微細化やクロック・スピードが上がるにしたがい、サインオフ解析におけるRC抽出の重要性が高くなってきています。QRC Extractionは、大容量と高性能を同時に実現したセル・レベルおよびトランジスタ・レベルのRC抽出を、それぞれVirtuosoプラットフォーム、Encounterプラットフォーム上で実行することができます。(図2)また、ファブのプロセス情報からテクノロジ・ファイルを作成し、それを用いて3D RC抽出を実現します。Encounterプラットフォームからスタンドアローンの抽出エンジンとして、QRC Extractionを実行できるだけでなく、コア・エンジンとしてCCE(Common Capacitance Engine)をEncounterプラットフォームに搭載しています。
このことにより、例えばクロストーク解析とその改善におけるイタレーション作業を、サインオフ・レベルで、しかもインプリメンテーションのフェーズ内で高速に行うことが可能になります。また、複数CPU実行機能においては重要なポイントであるスケーラビリティと抽出結果の安定性は、Cadence QRC Extractionの大きなアドバンテージの一つになっています。
図2:Cadence QRC Extraction


Encounter Timing System
Encounter Timing System(ETS)は、サインオフとして使われているタイミング解析ツールです。ETSはCommon Timing Engine(CTE)をエンジンとしていますが、このエンジンはインプリメンテーション・ツールであるEncounter Digital Implementation System(EDI System)でもタイミング解析エンジンとして使われています。インプリメンテーションとサインオフにて共通エンジンを使用することにより、設計のネックであった設計繰り返しの削減や設計マージンの削減を実現します。
ETSはスタティック・タイミング解析エンジン(CTE)をベースに、遅延計算にはサインオフとして普及していたSignalStormのテクノロジを、そしてクロストーク解析のポイント・ツールであったCeltICをエンジンとして統合しました。これら多くの実績あるエンジンを搭載し、サインオフ・レベルのタイミング解析環境を提供しています。
また、多くのデバッグ機能を搭載したGUIを持つことにより、設計者の経験がより必要であった解析作業等を視覚的に行え、問題点の早期発見の手助けをし、デバッグ作業時間の短縮に貢献します。Effective Current Source Model(ECSM)を使用することにより、高精度の遅延計算を行い、パワー解析を行うEncounter Power System(EPS)とのリンク(図3)により、IR Dropを考慮した、タイミング解析を特別な設定なしに行うことができます。高速・高精度を求められるクロストーク解析においては、cdB(ノイズ・ライブラリ)を用い、SPICEレベルの解析を高速に行います。さらに先端のテクノロジとして統計的なタイミング解析機能を搭載し、EDI Systemからの実行では、解析だけでなく最適化まで行うことが可能です。

ETSの特徴
STA/SIに必要な機能
サインオフ・レベルのSTA
プラグイン機能により、他の解析環境からの簡単な移行が可能
CeltIC NDC、SignalStorm NDC、Common Timing Engine
(CTE)、Common Power Engine(CPE)の多くの実績を持つ解析エンジンを搭載

生産性の向上
タイミングとSI解析でのマルチCPU実行
配置・配線とサインオフでの整合性の取れた結果
デバッグの機能

精度と予測性の向上
洗練された クロストーク解析エンジンの搭載
ECSMの使用による高精度な遅延計算
統計的解析手法を包含
図3:ETSとEPSのリンク


Encounter Power System
Encounter Power System(EPS)は、Encounterプラットフォーム上で、スタティックおよびダイナミックに対応したPower/IR Drop解析を行うサインオフ・ツールです。Encounterプラットフォーム上で動作することにより、デキャップの最適化、パワー・スイッチの最適化、そしてIR Dropを考慮したタイミング解析、さらにはクロック・ジッタ解析をタイミング解析にフィードバックするといった高度な解析手法を容易に実現できます。また、これらの機能に付け加え、EDI SystemにEPSと共通のエンジンであるCommon Power Engine(CPE)を用いた、Early Rail Analysis(ERA)機能を搭載することにより、デザイン早期でのRail解析、そしてその結果を基にした最適なパワー・プランを行うことを可能にしました。また、先端のテクノロジとして、熱解析機能や統計的なリーク電力解析(Beta機能)を行うことが可能です。

EPSの特徴
統合された解析環境
インプリメンテーション設計、サインオフ解析で一貫した解析エンジン
多くの実績のある解析エンジンをベースに環境を構築
電源ライン、デキャップ、パワー・スイッチ等の最適化
インプリメンテーションの全ての工程で実行可能
最先端の解析機能
IR Dropを考慮したタイミング解析
熱、エレクトロ・マイグレーション解析
統計的タイミング解析と統計的リーク電力 解析、それらを考慮した最適化

まとめ
これらのご紹介した高精度・高パフォーマンスなコア・エンジンは、Encounterプラットフォームに統合されています。サインオフ・レベルの解析エンジンをインプリメンテーションで持つことで、より高精度なフロアプランやインプリメンテーションを行うことが可能となり、ツール間のコリレーション・テストの工数、設計マージン縮小、TAT削減を実現する環境を構築することができます。また、今後の32nm、22nmへと進むプロセス・テクノロジが必要とする解析環境の構築準備がすでに行われていますが、ケイデンスは、その一方で既存のプロセス・テクノロジのデザインに対するさらなる効率化を図るデザイン・フローも提案しています。

テクニカル・フィールド・オペレーション本部
池田 建善